ヴィヴィアン・ウエストウッドの代名詞といえばパンク。約9年前から生産担当としてブランドに携わっていますが、斬新なアートワークやデザイン、難解なコンビネーション、来日するスタッフの装いに至るまで、想像以上に刺激的で、当初は私自身のファッションや生活観とは遠いものとさえ感じていました○ブランドの理解を深めていくにつれて一番の驚きだったのは、アバンギャルドなクリエーションの原点が様々な“伝統”に根ざしていることでした○複数回のアプルーバルの過程の中で、英国デザイナーからのインプットに始まり、写真や絵でテーマを表現したイメージマップが描かれていきます。英国にルーツをおきながら、時代を超越した服飾文化、芸術、建築、カルチャー、スポーツ、王室文化といった“前衛”とは対極的な要素のオンパレードです○歴史ある文化の解体と破壊……まるで自身をも否定しながら進化を続けるのがヴィヴィアン・ウエストウッドというブランドだと気づけたことで興味が加速していきました○ヴィヴィアンのパンクとは、単なるファッションや反社会的な手法ではなく常に進化しつづけるための原動力なのだと私なりに解釈をしています○変化をやめない姿、自身の生き方を貫くスタイル、環境問題への取り組みといった彼女の強さこそがブランド最大の魅力であり、着る人の心を動かし身につけたいと思わせる理由なのかもしれません○『これはかっこいい』『何かが違う』。私自身が感じるある種の“違和感”を紐解き具体化し、生産してお客様に届ける。ブランドに関わる一員としてそんな仕事ができる人になりたいです○プライベートでホノルルマラソンに参加。ベソかきながら挫けそうになっても「次の給水所まで」を繰り返しゴールテープが見えたときに感じたのは辛さからの解放だけではありませんでした。小さなチャレンジを積み重ね、走り抜けることができた自分に対する驚きが喜びに変わっていたのです。
Seiko Nagahama
長濱 成子
生産