「ポール・スミス」におけるスタッフトレーナーの業務は多岐にわたりますが、主に新入社員と中途採用スタッフを対象にした研修や、新しいシーズンの展開が始まる時期に全スタッフが参加できるよう数日間かけて行う、コレクションに関する理解を深めるための勉強会などを統括しています。

　共通しているのは、アイテムやサイズ展開といった知識や修理対応のノウハウなど店頭スタッフとして最低限の基礎を身につけてもらうこと。加えて、ブランドの歴史や精神、デザインへのこだわりについて知ることで、ブランドのことを好きになってほしいという思いです。もちろん全員が一朝一夕で理解できるものではないので、何度も繰り返し、継続して伝え続けることを使命だと感じています。

　今はインターネットを中心に、どんな情報へも即座にアクセスすることができます。ブランドのことをかなり深く知っているお客様もいれば、すでに商品のディテールを把握している方もいる。自身の経験からも販売員という仕事が商品を単に販売するだけでなく、レイアウト、接客テクニック、人間力など様々な事が必要だという意識がある分、僕たちがサポートできる部分やリアルタイムな情報発信も仕事のひとつです。

トレーナーという仕事の魅力は、スタッフの成長を目にしたときにある

「ポール・スミス」のセクションで昨年から始動した新しい取り組みとして、入社後２年間かけて行う育成プログラムがあります。現役の店長がインストラクターとなって数名の新人スタッフと密にコミュニケーションをとりながら商品知識をさらに身につけてもらうと同時に、個々人の課題を洗い出したり、目標設定のサポートをするというものです。僕たち店舗運営チームだけでなく同期の社員同士が定期的に顔を合わせることで、成長過程や悩みを共有したり、それぞれに向けた助言をしやすい場づくりに繋がっていると確信しています。

　スタッフトレーナーの魅力は、やはり、スタッフの成長を肌で感じた瞬間にあります。「接客が怖い」だとか「笑顔が苦手」と言っていた新入社員が数年後、現場で学び、さまざまな研修を経て、後輩を的確に指導してリーダーシップを発揮している姿をみると感動すら覚えます。お客様をハッピーにできる接客の力と、自身が自発的に目標にする数字を達成する力。この両方のバランスの重要性を伝え続けるべく、僕自身も決して驕らず、現在の仕事のブラッシュアップや新しい事にチャレンジしていきたいと考えています。